結論から解説「副業所得20万円以下でも住民税の申告は必要です」
「副業の年間所得が20万円以下なら、税金の申告はしなくてもいいんだよね?」
多くの方がこのように考えていますが、実はその認識には注意が必要です。
結論から言うと、副業の所得が20万円以下であっても、住民税の申告は原則として必要です。
「所得税の確定申告が不要」というルールと「住民税の申告」は別物です。この違いを知らないままでいると、後から追加で税金を請求されたり、思わぬ形で会社に副業が知られてしまったりする可能性があります。
この記事では、なぜ住民税の申告が必要なのか、申告しないと具体的にどうなるのか、そして会社に知られずに正しく手続きを済ませる方法まで、誰にでも分かるように徹底解説します。
なぜ「副業所得20万円以下は申告不要」と勘違いされるのか?
そもそも、なぜ「20万円以下なら申告不要」という話が広まっているのでしょうか。
それは、所得税の確定申告に関するルールがもとになっています。
会社員(給与所得者)の場合、以下の条件を満たせば、副業で得た所得が20万円以下の場合に限り、所得税の確定申告をしなくてもよいとされています。
- 給与の収入金額が2,000万円以下
- 給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる
- 給与所得以外の所得金額が20万円以下
多くの方がこの「所得税」のルールを、「税金全体のルール」だと勘違いしてしまうのです。
しかし、このルールは住民税には適用されません。
地方税法では、所得があった場合は金額にかかわらず申告が必要と定められています。
そのため、所得税の確定申告をしないのであれば、別途お住まいの市区町村へ住民税の申告をする必要があるのです。
住民税を申告しないとどうなる?絶対に知っておくべき3つのリスク
もし住民税の申告を怠った場合、いくつかの重大なリスクが伴います。「少額だから大丈夫だろう」と軽く考えず、しっかりと内容を把握しておきましょう。
リスク1:追徴課税(延滞税・無申告加算税)の発生
申告期限までに申告しなかった場合、本来納めるべきだった税額に加えて、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」が課される可能性があります。
延滞税は納付が遅れた日数に応じて増えていくため、放置する期間が長いほど負担は大きくなります。せっかく副業で得た利益が、ペナルティで消えてしまうのは非常にもったいないことです。
リスク2:会社に副業がバレる可能性が極めて高い
住民税の申告をしない場合、最も懸念されるのが「会社に副業がバレてしまう」リスクです。
会社員の住民税は通常、会社が給与から天引きして納付する「特別徴収」という形が取られます。
申告をしていないと、役所はあなたが本業以外に得た所得を把握した上で、その分の住民税額を本業の会社に通知してしまいます。すると、会社の経理担当者は給与に対して住民税額が多すぎることに気づき、「他に収入があるのでは?」と副業が発覚する原因となるのです。
リスク3:各種行政サービスに影響が出る可能性
住民税の申告データは、国民健康保険料の算定や、児童手当などの給付、保育園の入園審査、公営住宅の入居申込など、様々な行政サービスの基準になっています。
また、住宅ローンやカードローンの審査で必要になる「所得証明書(課税証明書)」にも、申告した所得が反映されます。申告を怠ると、この証明書に副業所得が記載されず、収入が低いと判断されて審査に影響が出る可能性があります。
税務署や役所はなぜ副業を把握できる?バレる仕組みを解説
「自分で申告しなければ、役所にはバレないのでは?」と思うかもしれませんが、その考えは通用しません。役所はあなたがどこから収入を得ているかを把握する仕組みを持っています。
その代表が「支払調書」です。
企業がフリーランスや個人事業主に報酬を支払った場合、「誰に、いくら支払ったか」という情報を記載した支払調書を税務署に提出する義務があります。この支払調書と、あなたが提出した申告内容を照らし合わせることで、申告漏れは簡単に発覚します。
さらに、マイナンバー制度の導入により、個人の所得情報はより正確に紐づけられるようになりました。「少額だから大丈夫」という安易な考えは非常に危険です。
【最重要】会社にバレずに住民税を申告する方法
では、どうすれば会社に知られずに住民税を正しく納めることができるのでしょうか。
その答えは、住民税の納付方法にあります。
最大の対策は、納付方法を「普通徴収」にすること
会社に副業を知られないための最大のポイントは、副業分の住民税の納付方法を「普通徴収」にすることです。
- 特別徴収:本業の給与から、副業分も合算した住民税が天引きされる方法。会社にバレる原因。
- 普通徴収:副業分の住民税の納付書が自宅に届き、自分で金融機関やコンビニで納付する方法。
この「普通徴収」を選択することで、副業分の住民税に関する通知が会社へ行くのを防ぐことができます。
具体的な手続き①:確定申告をする場合
所得税の確定申告をする場合は、手続きは簡単です。
確定申告書第二表の下部にある「住民税に関する事項」という欄の、「自分で納付」にチェックを入れるだけです。
ここにチェックを入れることで、「給与所得以外の住民税は普通徴収でお願いします」という意思表示になり、役所は適切に処理してくれます。
具体的な手続き②:住民税の申告だけをする場合
所得税の確定申告が不要で、住民税の申告のみを行う場合は、お住まいの市区町村の役所(税務課など)で手続きをします。
申告書は役所の窓口やウェブサイトから入手できます。その申告書にも、通常は住民税の納付方法を選択する欄がありますので、必ず「普通徴収」を選んで提出してください。
副業の住民税申告に関するQ&A
最後に、副業の住民税に関するよくある質問にお答えします。
Q1. 申告はいつまでにすればいい?
所得税の確定申告と同じく、原則として毎年2月16日から3月15日までの期間に行います。対象となるのは、前年1月1日から12月31日までの所得です。
Q2. 副業の所得がマイナス(赤字)の場合は?
副業の所得が赤字になった場合、住民税の申告義務はありません。ただし、所得税の確定申告をすることで、給与所得と損益通算して税金の還付を受けられる場合がありますので、確定申告を検討することをおすすめします。
Q3. うっかり申告を忘れてしまったらどうすればいい?
申告を忘れていたことに気づいたら、できるだけ早く自主的に申告(期限後申告)をしてください。税務署や役所から指摘を受ける前に申告すれば、無申告加算税が軽減される場合があります。
まとめ:正しい知識と手続きで、安心して副業に取り組もう
今回は、副業所得20万円以下の場合の住民税の申告について解説しました。
重要なポイントを最後におさらいしましょう。
- 副業所得が20万円以下でも、住民税の申告は原則として必要
- 申告しないと、追徴課税や会社バレのリスクがある
- 会社にバレないためには、申告時に「普通徴収」を選択することが必須
税金の手続きと聞くと難しく感じるかもしれませんが、一度理解してしまえば何も怖いことはありません。正しい知識を身につけ、適切な手続きを行うことで、安心して副業に取り組むことができます。