副業の「手取り」を正確に把握していますか?
副業を始めた、あるいはこれから始めようとしている多くの方が気になるのが、「実際にいくら手元に残るのか?」という点ではないでしょうか。しかし、副業で得た収入が、そのまま全額自分のものになるわけではありません。そこから税金などが引かれ、最終的な金額が「手取り」となります。この記事では、あなたの副業の手取り額がいくらになるのか、簡単なシミュレーションを通じて明らかにします。
副業収入がそのまま手取り額にならない理由
副業で得た収入からは、所得税や住民税といった税金が差し引かれます。会社員の場合、これらの税金は給与から天引き(特別徴収)されるため意識しにくいですが、副業の収入分は原則として自分で確定申告を行い、納税する必要があります。この「税金」の存在こそが、収入と手取りが異なる最大の理由です。
この記事でわかること:手取り額の計算から税金の仕組みまで
この記事を最後まで読めば、以下のことが明確になります。
- 収入別の手取り額の目安がわかる
- 自分で手取り額を計算する方法がわかる
- 税金の基本的な仕組みと確定申告の知識が身につく
- 会社にバレずに副業をするための具体的な方法がわかる
税金の知識は、あなたの資産を守るための重要な武器です。賢く学んでいきましょう。
【結論】副業収入別!手取り額シミュレーション早見表
まずは結論から。副業の年間所得に対するおおよその手取り額の目安を一覧にしました。ご自身の状況に近いものをご確認ください。
副業月収5万円(年間所得60万円)の場合の手取り目安
・手取り年額(目安):約54万円
年間の所得税・住民税の合計が約6万円程度かかります。月に換算すると約4.5万円が手取りとなります。
副業月収10万円(年間所得120万円)の場合の手取り目安
・手取り年額(目安):約108万円
年間の所得税・住民税の合計が約12万円程度かかります。月に換算すると約9万円が手取りとなります。
副業月収30万円(年間所得360万円)の場合の手取り目安
・手取り年額(目安):約295万円
年間の所得税・住民税の合計が約65万円程度かかります。所得が増えるほど税率も上がるため、差し引かれる金額も大きくなります。
※シミュレーションの前提条件
上記のシミュレーションは、以下の条件で計算しています。
・本業の年収500万円の会社員
・独身で扶養家族なし
・所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみを考慮
・経費は0円(収入=所得)として計算
より正確な金額を知りたい場合は、次の章の計算方法をご活用ください。
副業の手取り額が決まる仕組みとは?計算式を解説
手取り額を正しく理解するためには、いくつかの重要な言葉と計算式を知る必要があります。
最重要ポイント:「収入」と「所得」の違い
この2つの言葉は同じ意味で使われがちですが、税金の計算においては全く異なります。
・収入:売上そのもの。顧客から受け取った金額の合計。
・所得:収入から、その収入を得るためにかかった「経費」を差し引いた金額。利益部分。
税金は「収入」ではなく「所得」に対してかかります。これが最大のポイントです。
手取り額の基本計算式
副業の最終的な手取り額は、以下の式で計算できます。
手取り額 = 収入 - 経費 - (所得税 + 住民税)
つまり、経費をしっかり計上し、税金を正しく計算することが、手取りを理解する上で不可欠です。
あなたの副業はどの所得?所得の種類について
副業で得た所得は、内容によっていくつかの種類に分類されますが、多くの場合「雑所得」または「事業所得」に該当します。事業として継続的に行っている場合は「事業所得」、それ以外は「雑所得」と覚えておくとよいでしょう。事業所得は、青色申告ができるなど税制上のメリットが大きくなります。
自分でできる!3ステップ副業の手取り計算シミュレーション
それでは、実際にあなたの手取り額を計算してみましょう。3つのステップで簡単に算出できます。
STEP1:副業所得を計算する(収入 − 経費)
まず、1年間(1月1日〜12月31日)の副業の総収入と、かかった経費をすべてリストアップします。そして「収入 - 経費 = 所得」を計算します。例えば、年間のWebデザインの売上が100万円で、サーバー代やソフト代などの経費が15万円かかった場合、所得は85万円となります。
STEP2:所得税を計算する(課税所得 × 税率 − 控除額)
次に所得税を計算します。副業の所得を、本業の給与所得と合算し、そこから基礎控除などの各種所得控除を引いて「課税所得」を算出します。その課税所得に、金額に応じた税率を掛けて所得税額が決まります。日本の所得税は累進課税のため、所得が多いほど税率が高くなります。
STEP3:住民税を計算する(課税所得 × 約10%)
住民税は、所得税の計算で用いた「課税所得」に対して、一律約10%の税率で課されます。計算はシンプルですが、納付方法が会社バレに直結するため注意が必要です(詳しくは後述)。
要注意!副業の手取りに影響する税金の重要知識
税金についてもう少し詳しく見ていきましょう。ここを理解することで、より賢く立ち回れます。
所得税:収入が多いほど税率が上がる「累進課税」
所得税の税率は、課税所得に応じて5%から45%までの7段階に分かれています。本業の給与と副業の所得を合算した金額で税率が決まるため、副業で所得が増えると、より高い税率区分に移行し、思ったより税額が高くなることがあります。
住民税:所得に対して一律約10%
住民税は、お住まいの市区町村と都道府県に納める税金で、税率は合計で約10%とほぼ一律です。所得税のように累進課税ではないため、計算しやすいのが特徴です。
意外と知らない「復興特別所得税」の存在
2037年まで、所得税額に対して2.1%の「復興特別所得税」が上乗せされます。確定申告の際には、算出した所得税にこの復興特別所得税を加えた金額を納付することを忘れないようにしましょう。
副業の確定申告「20万円の壁」の落とし穴
副業初心者が最も誤解しやすいのが「20万円の壁」です。正しい知識を身につけましょう。
「所得20万円以下は確定申告不要」の正しい意味
会社員などの給与所得者が副業をする場合、「副業の所得が年間20万円以下」であれば、「所得税の」確定申告は不要です。これは国税庁への申告が不要という意味であり、税金を払わなくて良いという意味ではありません。
警告:住民税の申告は20万円以下でも必須
所得税の確定申告が不要な場合でも、お住まいの市区町村への住民税の申告は別途必要です。確定申告を行えば、そのデータが自動的に市区町村に送られるため住民税の申告は不要になりますが、確定申告をしない場合は、自分で市区町村の窓口に出向いて申告手続きをしなければなりません。
確定申告をした方がお得になるケース
副業の収入から源泉徴収(報酬からあらかじめ税金が天引きされること)されている場合、所得が20万円以下でも確定申告をすることで、払いすぎた税金が還付される(戻ってくる)ことがあります。明細を確認し、源泉徴収されていれば確定申告を検討しましょう。
【最重要】会社に副業がバレないための確定申告の方法
多くの方が心配する「会社バレ」。その原因と対策は、実は非常にシンプルです。
副業がバレる最大の原因は「住民税」
会社は、社員に支払った給与額を市区町村に報告します。市区町村はその報告額と、あなたが申告した副業所得を合算して住民税額を決定し、会社に通知します。会社の経理担当者が「給与額の割に住民税額が多い」と気づいた時に、副業が発覚するのです。
唯一の対策:住民税の納付方法で「普通徴収」を選択する
この発覚ルートを防ぐ方法が、住民税の納付方法を変更することです。確定申告の際、住民税に関する事項で「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れると、副業分の住民税の納付書が自宅に届くようになります。これにより、会社に通知される住民税額は給与分のみとなり、副業がバレるリスクを大幅に減らすことができます。
確定申告書でのチェック箇所
確定申告書の第二表に「住民税に関する事項」という欄があります。そこの「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」を必ず選択してください。これが会社バレを防ぐための最も重要な手続きです。
副業の手取りを最大化する3つの節税テクニック
最後に、合法的に税金を抑え、手取り額を増やすための具体的なテクニックを紹介します。
経費にできるものを漏れなく計上する(具体例一覧)
税金は「所得(収入ー経費)」にかかるため、経費を漏れなく計上することが最も基本的で効果的な節税です。副業に関連する支出は、忘れずに記録しておきましょう。
【経費の例】
・文房具代、書籍代
・打ち合わせの飲食代
・PCやスマートフォンなどの購入費(按分が必要な場合あり)
・セミナー参加費
・交通費
開業届を出すメリット:青色申告で最大65万円控除
税務署に「開業届」を提出し、事業として副業を行う場合、「青色申告」を選択できます。青色申告を行うと、最大で65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。これは、所得から無条件で65万円を差し引けるという非常に強力な節税策です。e-Tax(電子申告)で申告するなどの条件があります。
iDeCoやふるさと納税で所得控除を増やす
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金や、ふるさと納税の寄付額は、全額が「所得控除」の対象となります。課税対象となる所得そのものを減らすことができるため、所得税・住民税の両方を節税する効果があります。本業の収入も含めて、将来の資産形成や地域貢献をしながら、賢く税金対策が可能です。
まとめ:賢くシミュレーションして、副業の手取りを最大化しよう
今回は、副業の手取りシミュレーションから、税金の計算、会社にバレないための確定申告方法まで、網羅的に解説しました。
重要なポイントは、「収入」ではなく「所得」で考えること、そして税金の仕組みを正しく理解し、適切な手続きを行うことです。最初は難しく感じるかもしれませんが、一度理解してしまえば、毎年自信を持って対処できるようになります。
この記事を参考に、まずはご自身の状況で手取り額をシミュレーションし、賢く副業に取り組んでいきましょう。